リーダーシップ・フォーラム

 
 
画像 Yoshiko Fujii (藤井 美子)
 黒川温泉を人気温泉に変貌させた後藤哲也氏のリーダーシップ
2009年 02月 18日(水曜日) 13:01 - Yoshiko Fujii (藤井 美子) の投稿
 
 黒川温泉を人気温泉に変貌させた後藤哲也氏のリーダーシップ 

 皆さんは、熊本県「黒川温泉」に行かれたことがあるだろうか?

 行かれたことがある方は、「黒川温泉」に一歩足を踏み入れると、何故か懐かしい、そして全てを包み込んでくれる、そんな雰囲気を醸し出している温泉街と感じるのでないだろうか?

 作り出したものではなく、自然と街全体が融合した一つの世界と感じるのは私だけだろうか・・・。 

 九州の有名な温泉街と言えば、別府温泉と湯布院温泉がよく挙げられるが、近年それ以上に宿泊客から支持される温泉が「黒川温泉」である。

 10年ほど前までは全国に数ある温泉街のひとつに過ぎなかった。その黒川温泉がどうして人気を集めるようになったのか?それは、心の癒しを求める人たちが思い描く「山のなかの鄙びた温泉街」へと黒川温泉が変貌を遂げたからだ。高い建物やネオンの溢れる温泉ではなく、黒川温泉は日本のふるさとの風情を残す。黒川温泉の再建の立役者である 山の宿 新明館 代表取締役 後藤哲也氏のインタビュー記事を読んで、黒川温泉を人気温泉に変貌させた後藤哲也氏のリーダーシップを考えていく。 

 1.明確なビジョンを持つ 

 後藤氏は、父親から経営を引き継ぐのと時をおなじくして、お客様を満足させるためには、「安らげる雰囲気をつくること」が重要だと考える。安らげる雰囲気を作るためには、自分の旅館の周りだけ自然と同じように木を植えようが、極端な話、旅館から一歩外に出ると周囲が無味乾燥なコンクリートの大型ホテルでは何にもならない。

 そこで、後藤氏が考えたことは、温泉街全体が協力して取り組んでこそ、はじめてお客様がくつろげる旅館を実現できる。温泉街全体が「黒川温泉」という一つの旅館、個々の旅館はその一部屋、道は廊下、その廊下を浴衣を着たお客様が自由気ままに、散歩を楽しめるような温泉街にしたいという考えを実現すべく、まずは自分の旅館から始めていった。 

 下線部の部分が後藤氏の考えているビジョンであり、この熱い思いこそが黒川温泉の再建への機動力であると思う。ビジョンを明確に持ち、変化に対応する事が必要である。

 ビジョンを明確に持たなければ、結果も手に入れることは難しい。 

2.たゆまない勉強、そして本質を捉える 

(後藤)「それが確信となったのは、毎年勉強で訪れていた京都で、観光客の流れの変化に気づいたときです。それまでは綺麗に剪定された松の木や錦鯉の泳ぐ池のある、格調高い日本庭園がある寺が人気だったのですが、25年ほど前からさまざまな木が混じりあった人の手が加わっていない自然そのままの景色の残る寺に人が集まるようなったんですよ。そのときに、いくら美しくても人工的につくられたものではなく、そのままの姿のものを人々は欲しているとわかったんです。」 

勉強して(体験学習)変化に気づき、その物事を追う。後藤氏は自分の目で確かめる事が一番大切であると考えている。そして、いつでも変化に気付ける様にアンテナをはる。結果、人は何を本当に欲しているか?と本質を捉える。 

3.大きな視点で物事を見る 

 ある旅館の主人から「後藤さんのやり方を教えて欲しい」と言われ、その人の想いに応えるべく、全て自分の考えている事をアドバイスしていく。 

(後藤)「私もその人の思いに応えるべく、風呂のつくり方や木の植え方はもとより、どのような温泉をお客さまが求めていて、どういう雰囲気をつくればリラックスしてもらえるのか、ということまでアドバイスしました。すると、他の旅館の主人も次々と話を聞きに来るようになったという具合に、黒川温泉全体に広がっていったんです。そういう動きさえスタートすれば、黒川温泉をどうにかして成長させたいという思いは全員共通ですから、そのために必要な取り組みを私が考え、すべての旅館で実践していったわけです。」 

後藤氏のアドバイス、話し方はその旅館の主人にどう映ったのか、推測するに偉そうではなかった、教えてやるという態度でもなく、見返りを要求するものでもなく、出し惜しみをするようなこともなかったと感じる。それはなぜか、後藤氏の思いは一旅館、新明館の経営ではなく、黒川温泉という大きな旅館の経営にあったからと思われる。そうした視点から、他の旅館の主人は同じ目標に向かって進むメンバーであり、フォロアーであった。 

4.先ずは自分から 

(後藤)「自分でやってみせるということでしょうね。旅館の周りに木を植えるということについても、最初は「木を植えてお客さまが来るわけないじゃないか」という目で見ていた人たちばかりでしたが、実際にそれで新明館にお客さまが集まるようになれば真剣に考えるようになります。単に口で言っているだけでは説得力がありません。」 

後藤氏は教えるだけでは説得力がないと考え、自分が黒川温泉を変えると言う強い信念をもって、自らが先頭に立って行動に移す。他の旅館経営者が、後藤氏の行動を見て、自分たちも考え行動するようになる。率先垂範 

5.考えを伝えていく 

(後藤)「ええ。でも、正直なところまだまだ不十分です。黒川温泉が一体となって心のふるさとを演出しているからこそ、お客さまが満足してくれているのに、自分の旅館だけの力だと勘違いしてしまうことがあります。先日も勝手に公共の駐車場に特定の旅館の幟が立てられていました。そうした行動が続くと、旅館同士の信頼が崩れ、黒川温泉の魅力も失われてしまいます。もっと若い経営者にわたしの考えを伝えていかなければと感じています。」 

 後藤氏のビジョンである、温泉街全体が協力して「黒川温泉」という一つの旅館ができあがったからこそ、旅館一軒一軒が合わさってチームになり、これからは更に一体となって信頼関係を維持することが求められる。その為に、今後、後藤氏がしていかなければならないことは、自分の考えを伝え続けていくことである。 

6.成功を遂げた、リーダーのケースを学ぶ意味―後藤氏のケースから学べること 

 後藤氏のインタビュー記事を通して学べることは以下のようなことである 

①熱い明確なビジョンの必要性

②毎日が勉強であり、アンテナをいつも広げておくこと

③自分の目で確かめ、本質を捉える

④大きな視点で物事を見る

⑤率先垂範の実行

⑥自分の想いを素直に伝え、指導していくこと

⑥変化に対応すること

⑦チーム一体となって信頼し維持していく

⑧状況判断が的確に行える事

⑨何より大切なことは状況に応じた行動をとること 

 成功を遂げたリーダーのケースに学ぶ意味は、その(リーダー)行動、考え方からリーダーシップ(影響を及ぼす行動)の要素を見い出し、それをスキルとして身につけるにはどうすればよいかを整理することであると思う。 

このインタビュー記事からは、自分の旅館の従業員へのリーダー行動の詳細は分からないが、他の旅館の経営者へのリーダー行動から成功の要素を探ることができる。 

7.最後に 

 今回の「黒川温泉」後藤氏のインタビュー記事を読んで、是非、後藤氏にお会いして更にリーダーシップを学びたいと思った。また、後藤氏のインタビュー記事に限らず、身近なケースでもリーダーシップの行動を学べる事が沢山あることに気づいた。

 これからも、今回学んだアンテナを広げてリーダーシップについて更に学び考えていこうと思う。